クリーニングは、内見の印象を最も左右する

原状回復の費用でいえば、室内クリーニングはクロスや床の工事ほど大きな金額にはなりません。しかし入居者が決まるかどうかへの影響は、金額の比ではありません。

内見に来た人が最初に感じるのは、間取りでも設備でもなく臭いと水回りの清潔感です。玄関を開けた瞬間の空気、浴室の鏡の曇り、シンクの水垢。ここで印象が決まると、その後どれだけ条件を説明しても覆りません。

費用対効果でいえば、原状回復の中で最も効率がよいのがクリーニングです。

「クリーニング一式」の中身を分解する

見積書では「ハウスクリーニング 一式」と書かれることがほとんどです。これは業界の慣習であって、隠しているわけではありません。ただ、発注する側が判断するには情報が足りません。

重要なのは、どこまでが標準で、どこからが追加になるかです。 ここが業者によって違うため、単純に総額だけを比べても意味がありません。

標準に含まれることが多い範囲

  • キッチン — シンク、蛇口、コンロ周り、収納内部の拭き上げ
  • 浴室 — 浴槽、壁面、鏡、水栓、排水口
  • 洗面所 — 洗面ボウル、鏡、収納
  • トイレ — 便器、床、タンク
  • 居室・廊下 — 床の清掃、巾木、スイッチプレート
  • 窓ガラス・サッシ — ガラス面、サッシレール

追加・オプションになりやすい箇所

ここが見積もりの差になりやすい部分です。金額が安い見積もりは、この範囲が外れていることがあります。

  • エアコン内部の分解洗浄 — 表面の拭き取りは標準でも、内部洗浄は別料金であることが多い箇所です
  • レンジフード(換気扇)の分解洗浄 — 表面のみか、シロッコファンまで外すかで手間がまったく違います
  • 浴室エプロン内部 — 浴槽の側面パネルを外した内側。カビや汚れが溜まりやすい一方、標準に含まれないことがあります
  • ベランダ・バルコニー — 床面の洗浄、排水口
  • 網戸の洗浄・張替え
  • 照明器具の内部

「この見積もりに、エアコン内部とレンジフードの分解は含まれますか」 — この一言で、比較できる状態になります。

クリーニングの範囲、見積書で確認できていますか

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費用の目安

空室のハウスクリーニングは、広さ(間取り)を基準に見積もられるのが一般的です。目安として次のような水準になります。

間取り費用の目安(標準範囲)
ワンルーム・1K15,000〜30,000円
1LDK・2DK25,000〜45,000円
2LDK・3DK35,000〜60,000円

これに、エアコン内部洗浄(1台あたり10,000〜18,000円程度)やレンジフード分解洗浄(10,000〜20,000円程度)が加わることがあります。

※いずれも一般的な目安です。汚れの程度、設備の種類、地域により変動します。

クリーニング費用は誰が負担するか

2020年施行の改正民法により、賃借人の原状回復義務からは通常損耗と経年変化が除外されます(民法第621条)。国土交通省のガイドラインでも、通常の清掃を行っていれば、退去時のハウスクリーニング費用は原則として貸主負担とされています。

ただし実務上は、賃貸借契約書に「退去時のクリーニング費用は借主負担」と明記する特約が設けられていることが多くあります。この特約は、

  • 契約書に明確に記載されていること
  • 金額または算定基準が具体的に示されていること
  • 入居者がその内容を認識して合意していること

といった要件を満たしていれば有効とされる場合があります。逆に、金額が不明確なまま「クリーニング代を負担する」とだけ書かれている特約は、争いになりやすい点に注意が必要です。

一方、入居者が通常の清掃を怠った結果の著しい汚れ(水回りの固着した汚れ、油汚れの放置、タバコのヤニなど)については、善管注意義務違反として借主負担を求められる余地があります。

※個別の負担区分は契約内容と実際の状態によります。判断に迷う場合は専門家にご確認ください。

順番を間違えると、二度手間になる

意外と見落とされるのが施工の順番です。

クリーニングは、必ずクロスや床の工事が終わったあとに行います。 先にクリーニングを入れてしまうと、その後の工事で出る粉塵や糊の汚れで、もう一度やり直しになります。

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 退去立会い・現況確認
  2. 不用品の撤去・残置物処分
  3. クロス・床などの内装工事
  4. 建具・設備の補修
  5. ハウスクリーニング
  6. 最終確認・写真撮影・募集開始

複数の業者に分けて発注する場合、この順番の調整を誰がやるのかが問題になります。手配が噛み合わないと、待ち時間がそのまま空室期間になります。

家賃7万円の物件なら空室1日あたり約2,300円の機会損失です。段取りの数日が、そのまま損失になります。この点は原状回復と不動産投資家|費用・利回り・空室期間の関係で詳しく整理しています。

まとめ

  • クリーニングは金額こそ小さいが、内見の印象を最も左右する。費用対効果が高い
  • 見積書の「一式」は、標準範囲と追加範囲を分けて確認する
  • 差が出やすいのはエアコン内部・レンジフード分解・浴室エプロン内部・ベランダ
  • 費用の目安はワンルームで15,000〜30,000円程度。オプションは別途
  • 原則は貸主負担だが、要件を満たす特約があれば借主負担となる場合がある
  • クリーニングは内装工事のあと。順番を間違えると二度手間になる

その「一式」に、何が含まれていますか

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出典

  • 民法第621条(賃借人の原状回復義務)
  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」

※本記事の金額・範囲はいずれも一般的な目安です。実際の標準範囲は事業者により異なります。個別の負担区分の判断は、契約内容および当事者間の協議によります。特定の事業者を評価・批判するものではありません。